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第4章 『達成の章』

2017年8月 富士弾丸登山編

4-1 嵐が過ぎ去り・・・

遭難という単語が頭をよぎり初めて身の危険を感じた九合目。頭を押さえてうずくまり嵐が過ぎ去ることをただ願う。

・・・どのくらい時間が経っただろう。


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かなり長い間じっとしていた感覚でしたが、実際はほんの2~3分くらいの間だったかもしれません。うずくまったままの状態で登山道(登ってきた方向)を見ていると、ついに後続の登山者の姿が現れました。ガスはまだ濃く風も吹き荒れているが、さっきよりは明らかに弱まっており動けないほどではありません。何より自分以外の動く登山者の姿が見えたことがこの上なく心強い。よし、行ける!
再出発すると、先ほどまでの自分と同様に登山道わきにへたり込んでいる登山者の姿がたくさん。こんなにたくさんの人たちがすぐ上にいたということにも全く気が付かないほど、濃い霧に覆われていたのですね。そして頂上が近づくにつれ周囲を覆う霧が晴れてきます。


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頂上が見えた

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ずっとあたりを覆っていた霧が、それこそあっという間に晴れていきます。さっきの嵐はいったい何だったのか、現実の出来事だったのかと思ってしまうレベル。
このあたりで渋滞というほどではありませんが若干登山者が連なった状態になりました。通常の自分だったらはよ行けと思ってイライラするか問答無用で抜かしにかかるかするところでしょうが、この時の私は「前の人、そんなに急いで登ることないよ(前が動かなければその分休めてラッキー)」という心理状況にありました。普段ではそんな考えには絶対ならないな・・・



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狛犬!                   鳥居!

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頂上直下の鳥居をくぐると、ついに到着です。



4-2 登頂!!

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吉田口・須走口頂上(3,710m)


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富士山頂奥宮 久須志神社


やっと着いたというのが正直な感想。昨今の富士山は観光地化され「誰でも登れる山」みたいに思われている風潮がある気がしますが(登山前の私自身そう思っていた)、実際は全然大変ですよ。確かに技術的に難しいところはありませんが、純粋に体力が必要。標高日本一は伊達ではありません。

※もっと言えば体力だけあっても登頂できるとは限らず、「運」の要素も絡んできますが、それについては後程触れます。



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下界の様子

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拡大



動画


さて、ここで私は一つ選択を迫られていました。それは富士山の山頂をぐるりと一周する、いわゆる「お鉢巡り」をするか否か。


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お鉢巡りルート図

教科書で習う通り富士山の標高は3,776m(小数点以下略)。その地点は富士山のお鉢の中でも最高所である「剣ヶ峰」が該当し、あろうことか吉田口の頂上からは正反対の場所に位置しています。

お鉢巡りをするかどうか、登山前の私は「体力に余裕があれば行う」という計画を立てていましたが、実際は九割方回るつもりでいました。お鉢までたどり着いたのなら普通に剣ヶ峰までも行けるだろう、と。

しかしはっきり言いましょう。現時点で私に体力の余裕はありません。現時刻は10時ちょい過ぎで、途中嵐に見舞われたりしながらも非常にいいペースで登ってこれましたが、その代償としてガス欠状態になっています。

単にバテているだけなら少し休めば回復しそうなものですが、この時私はお鉢巡りは行わない方がいいという予感を感じていました。ここまでで無事登頂成功とし、すぐに下山した方がすべてうまくいく、という確信めいた予感が。

こういう第六感的なものを根拠のない気の迷いととらえるのはいささか早計です。例えば、自分でも気付いていない身体の異変を無意識のうちに感じ取っていて、脳に不安感として信号を送っている、ということもありえるのではないでしょうか。

ただこの時の私は、将来この登山記を作成するにあたり、ここで剣ヶ峰まで行かないのはいささかかっこ悪いかもという考えにとらわれてしまい、直感を押さえてお鉢巡りをすることを決意したのです。

※一般的には登山道頂上まで到達すれば間違いなく富士山登頂であり、無理して剣ヶ峰まで登る必要はありません。



4-3 お鉢巡りへ

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山頂山小屋群                天空のベンチ

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吉田・須走口下山道分岐

お鉢巡りをどちら周りでするかはもちろん各人の自由ですが、私は時計回りに進むことにしました。同じ方向に進む人が多かったように思います。久須志神社から時計回りに進むと吉田口山頂の山小屋群(山口屋・扇屋・東京屋など)を抜け、すぐに吉田・須走口下山道に到達します。ここで下山しないと、もう一度この場所に来るにはお鉢を一周してこなければならない・・・


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片道50分か・・               成就岳(3,735m)

下山道分岐の場所から剣ヶ峰までは片道50分表記。往復するにしても一周するにしても、再びこの場所に戻ってくるのに1時間40分は見ておく必要があるということ。普通の登山なら山頂のさわやかな空気を満喫するため長く滞在したいという人が多いでしょうが、ことこの場所においては正直言ってあまり長い時間山頂に留まっていたくないという気持ちがあります。高山病症状がいつ出てきてもおかしくない環境下にいますので。
とりあえず足が動くうちにさっさと先へ進もうと道なりに山を登って行くも、ピーク上にある小さな鳥居を見て道間違いに気付く。富士山山頂には剣ヶ峰を含めて八つのピークがあり、八神峰とも称されていますが、その中の一つ、成就岳へ登っていました。成就岳の斜面は緩やかなため、ハイシーズンの夜明け前には御来光目当ての人で埋め尽くされたりもするようですが、ここの余分な上り下りで地味に体力消耗。スタートから1,400m以上高度を上げてきたことを考えればここでの20~30mの高低差など誤差の範囲と思われるかもしれませんが、高さ30mというのを実生活に当てはめると、実に10階建てのマンションの軒高に相当するとのこと。10階建てマンションの屋上までの階段を上り下りすることを考えれば、決して小さい高度差ではないことをご理解いただけるかと思います。おまけに現地での空気の薄さとこれまでの疲労の蓄積、さらにルートミスしたことの心理的ダメージも加算されます。



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こっちがお鉢巡りルート           下山道・・・

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伊豆岳(3,749m)             朝日岳(3,733m)

成就岳を巻く形で付けられている道がお鉢巡りルート。左手下には吉田須走口下山道がはるか下までジグザグに伸びているのが見下ろせます。下山道の終わりが見えないというのがかなり恐ろしいところですが、まずはお鉢巡りを完遂させることに集中しなければなりません。

先に進むと独特の形をした伊豆岳が、さらにその先には八神峰の一つ、朝日岳が現れます。伊豆岳と朝日岳の間の鞍部は荒巻と呼ばれる風の通り道となっており、強風時には通過に注意が必要。右手(火口側)には強風対策の石積みが築かれています。



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火口(大内院)               あれが剣ヶ峰・・・

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雲海                    東安河原

荒巻(勢至ヶ窪)からの火口の様子は広大すぎて1枚の写真に納まりきりません。富士山の火口の底は大内院と呼ばれ、最深部の標高は3,537m(資料によって誤差あり)。この標高は吉田ルート九合目よりもかなり低く、目指す剣ヶ峰からの標高差は200mを大きく越えます。そして対岸やや左、ひときわ高くなっているところがその剣ヶ峰。

お鉢巡りを始めてから天気は回復し、日差しを浴びて再び暑さを感じてきます。見事な雲海を眺めながらジャンバーを脱いでナップサックに入れると、紐の接続部分がほころんで取れそうになっていることに気づく。100円の袋の耐久性はこんなものでしょうが、前年冬からの山城めぐりなどで重宝していたので少しショック。何十回の山城攻略よりも1回の富士登山の方が袋にかかる負荷が大きかったということなのでしょう。
朝日岳を過ぎると東安河原と呼ばれるなだらかな場所に出ます。この場所はかつて中央気象台富士山頂観測所が設置されていたところ(現在は剣ヶ峰に移設)。



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東安河原から眺めた剣ヶ峰方面。八神峰の駒ヶ岳(3,722m)、三島岳(3,734m)、浅間岳(3,722m)も一望できます。

む?奥の剣ヶ峰を拡大すると・・・



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あんなところを登るのかな?



4-4 御殿場口・富士宮口頂上

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銀明水・御殿場口頂上(3,706m)

東安河原から階段を下った先にあるのが銀明水。同じ場所が御殿場口ルートの頂上となります。御殿場口ルートといえば下りの「砂はしり」が有名で、余力のある人ならものすごいスピードで駆け降りることができるルート。一歩3m余りにもなるというから想像するにすさまじそう。通常状態ならぜひ経験してみたいところですが、ここまで登ってきた後にそれをやると私なら膝が破壊されそうです。


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すぐ隣に岩場のピークがあったのでよじ登ってみましたが、ここが駒ヶ岳(3,722m・wikiだと3,718m)でありました。頂上の祠の中には銅製の馬が納められており、駒ヶ岳の名前の由来とも関わっているとのこと。


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駒ヶ岳頂上から御殿場口頂上方面を振り返って。

ちなみに先日放送された乃木坂工事中の4期生富士登山で、吉田ルート組と富士宮ルート組が感動の再会を果たしたのがこの場所でしたね。吉田ルート組の2人の方がお鉢を半周近く歩いてきているので明らかに歩行距離が長くなっています。




この放送と自分の実体験を踏まえて思うところがあるのですが、最後のところで触れたいと思います。
とりあえずみんなよく頑張りました。偉い。



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富士宮口頂上(3,712m)・頂上富士館

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富士山頂上浅間大社奥宮・富士山頂郵便局

御殿場口頂上のすぐ隣が富士宮口の頂上。吉田ルートの次にメジャーなルートであり、浅間大社奥宮や山頂郵便局もあって栄えている感じです。この郵便局から葉書を出すと特別な消印を押してもらえるので登頂の記念にもなります。妹も以前の登頂時にここから実家に葉書を送っていました。


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Author: KD
由緒ある建造物、急峻な山城、遺構の残っていない平地城館、考証無視の模擬天守、すべて等しく探訪対象。一番好きな瞬間は超マイナーな城館で城址碑や標柱を見つけたとき。
© 2010 城館探訪記

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