忍城① ~のぼうの城~
- 2010/07/27
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天正十年五月。石田三成は羽柴秀吉に従って備中・高松城攻略の陣にいた。二人は建設した巨大な人口堤の上にいる。永禄銭八千貫文を投じて作られた堤だ。側に大谷吉継と長束正家もいた。
秀吉は拠点となる城には二度と抵抗の意志がなくなるような戦術で攻めた。鳥取城しかり、この高松城しかりである。そして高松城には驚天動地の戦術で挑んでいる。それは「水攻め」である・・・。
郷土資料館の駐車場ではなく裏側の駐車場に停めたら、いきなり土塁が。
――天正十八年正月。秀吉は北条家討伐の軍令を発した。総兵力は兵だけでも二十五万騎、その他を合わせると五十万にも及ぶと言われた。対する北条家は四万騎にもみたない。
目立った武功のない石田三成は今回も奉行を命ぜられていた。いわば事務方である。だが、三成は秀吉に呼ばれ、小田原に着陣次第、北条家の支城攻めを命ぜられた。軍勢は二万。総大将は石田三成だ。他に大谷吉継と長束正家、宇都宮国綱、佐竹義宣がつけられた。秀吉は武功をたてよというのだ。
攻め落とす城は上州館林城に、武州忍城。
このお城、正直どれが遺構でどれが再建のものか、なかなか判断付きかねるところです。
武州の忍城(おしじょう)は成田氏の居城であり、関東七名城のひとつ。
周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる。
領主・成田家一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれていた。
成田長親という人物を紹介すると、図抜けて背が高い。脂肪がのっているため横幅もあり身体は大きい。だが、ただ大きいだけで、強い印象を与えない。さらに、醜男である。鼻梁は高いが、唇は無駄に分厚く、目は細い。表情は極端に乏しい。武芸はもちろんのこと、何をやらせてもダメ。
農作業は大好きで、何とかして手伝いたいと思って、村に出てくる。何をやらせてもダメな長親が手伝うと、かえって農作業の効率が悪くなってしまう。だが、長親は善意でやっているため、農民は文句が言えなくなってしまう。
そんな長親だが、領民からは慕われている。いや、慕われているというより、俺たちがついていなかったら、のぼう様はどうなってしまうのだと思われている。
移築高麗門。かつての藩校「進修館」の表門であったと伝えられる。
豊臣側に抵抗するべく、北条氏政は関東各地の支城の城主に篭城に参加するよう通達。支城の一つであった忍城主の成田氏長は、北条に従うように見せかけ、裏で豊臣側への降伏を図りつつ、篭城作戦に参加する。
このあたりはいかにも近世城郭風です。
小田原へ出発するに先立ち、成田氏長は正木丹波、柴崎和泉守、酒巻靭負を忍城留守居とした。この三家老は主戦派であったため、内通の邪魔となるので留守役となった。秀吉の軍勢が来たら、一戦も交えずに開城せよという。
城代は病身ながらも成田泰季(長親の父)が務め、長親はいうまでもなく留守居だ。
いったん御三階櫓を通り過ぎて外に出てみます。ちなみに内部は郷土博物館になっています。
――館林城を攻め落とした三成の軍が忍城に来襲した。三成の軍は二万三千にふくれていた。対する忍城の軍は小田原に兵を出しているため、五百である。
ついに忍城は大軍に囲われた。そして石田三成の軍使として長束正家がやってくる。正家は弱きものに強く、強きものに弱くでる。果たして正家は高飛車な態度に出たため、長親は怒る。
門の脇の通用口から侵入。その隣には城址碑。
「強き者が強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、一片の誇りを持つことさえも許されない。小才のきく者だけがくるくると回る頭でうまく立ち回り、人がましい顔で幅をきかす。ならば無能で、人が良く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか」
「それが世の習いと申すなら、このわしは許さん」
由来の説明板。
当主・氏長より降伏を知らされていた重臣たちは混乱するが、かくして忍城戦は幕を開ける。
鐘楼。提げられた鐘は、殿様が伊勢桑名より忍へ移封となった際に桑名より持ってきた鐘を模したもので、本物の鐘は郷土博物館に展示されています。
総大将たる長親には、将に求められる智も仁も勇もない、正にその名の通り、でくのぼうのような男。主だった将兵は小田原へ赴いていた。三成率いる二万超の軍勢に、百姓らを徴発して二千強の成田氏。果たして勝機はあるのか。
・・・続きません。
続きが知りたい方は本で。
次回は簡単なその後を。
その②へ
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